
結論から言いますと、中古車オークションにもメーター改ざん車は紛れ込んでいます。ただし、その割合は以前と比べると格段に少なくなっています。まずは悪質な中古車業者が行うメーター改ざんの手口を解説していきましょう。
目次
メーターの種類
メーターにはアナログメーターとデジタルメーターの2種類があります。アナログメーターはスロットマシンのようにドラム式で走行距離が表示される昔ながらのメーターです。デジタルメーターはデジタルで走行距離が1キロ単位で表示される、新しいタイプのメーターです。
アナログメーターの改ざんは実に簡単です。メーターを車から取り外して、メーターを巻き戻して、再び取り付ければ終了です。この作業は自動車整備士ならば誰でも行うことが出来る簡単な作業です。そのため(昔の自動車はアナログメーターが一般的でしたが)、現在はより改ざんがしづらいデジタルメーターに移行しています。
一方、デジタルメーターの改ざんはアナログメーターほど簡単ではありませんが、改ざんが可能なことに変わりはありません。デジタルメーターも、ある機械を使えば走行距離の改ざんは可能です。また、メーター自体を交換することも可能なため、実質的にはアナログだろうとデジタルだろうと、改ざんしようと思えば簡単にできると思って間違いないでしょう。
ただし、中古車業界もただ手をこまねいてこのような状況を見ていたわけではなく、きちんと対策を行っています。代表的なシステムが走行メーター管理システムです。このシステムは日本オートオークション協議会が管理している、走行距離のデータベースです。
オークションに出品された自動車は、その段階での走行距離を逐一チェックされ、データベースに登録されます。それと同時に走行距離に異常が認められないかのチェックも行われます。主要なオークション会場では基本的にすべての自動車をチェックしています。もし一般ユーザーが自身の車の走行距離について不信感を持った時は、購入した中古車の走行距離をシステムで検索し、照合することが出来ます。
しかし、このシステムにも欠点があります。一つは照会に1500円がかかること。もう一つは、蓄積されたデータから走行距離をチェックするというシステムの性質上、データが蓄積されていない自動車(オークション出品歴がない自動車など)は照合ができないことがあります。
メーター改ざんを見抜く方法
その他、メーター改ざんを見抜く方法として、エンジンルーム内のタイミングベルト交換ステッカーをチェックすること挙げられます。通常、タイミングベルトを交換すると、エンジンルーム内にタイミングベルト交換ステッカーが貼られます。タイミングベルトとはバルブとピストンのタイミングを司るベルトです。
タイミングベルトは走行距離10万kmごとに交換するようメーカーが指定しているため、走行距離が10万kmを大きく超える自動車の場合は、必ずどこかにステッカーがあるはずです(通常はエンジンルーム内のどこかにあります)。ステッカーにはその日の時点での走行距離が書き込まれます。たとえば、メーターが5万kmを示しているのに、ステッカーに10万kmと書いてあった場合は、確実にメーター改ざんが行われたことになります。このような自動車はなんとしても避けるべきです。
もちろん、抜け目のない業者はメーター改ざんのついでにそのようなステッカーを処分してしまうのでしょうが、間抜けな輩はそうしたステッカー類を見落とす可能性があります。
点検整備記録簿もチェック
点検整備記録簿も大事なアイテムです。点検整備記録簿は使用者の氏名、点検内容などが記入される記録簿ですが、その記録簿には総走行距離を記入する欄があります。点検整備記録簿の一番下、「総走行距離」の欄をご覧ください。ここにはその整備を実施した工場名、日付、走行距離が記入されています。つまり、点検整備記録簿はある日付時点での走行距離を証明する証拠となります。この日付と走行距離の履歴を組み合わせることにより、メーター改ざん車を見抜くことが出来ます。
点検整備記録簿が複数ある場合は、それをすべて日付順に並べてみましょう。もしそこで矛盾が見つかれば(たとえば、日付が新しいものの方が走行距離が短くなっていたり、現在のメーターより点検整備記録簿に記入されている走行距離が長かったりなど)、それはメーター改ざん車だということになります。
ただし、点検整備記録簿は必ずしも保管されているとは限りません。というか、悪質な業者は点検整備記録簿からメーター改ざんがばれることを知っていますから、何か適当な理由をつけて処分しているはずです。
また、かなりアナログな方法ですが、内装や外装の状態からある程度走行距離を推測することも可能です。中古車の内外装のきれいさと、走行距離はたいてい相関関係があります。一般的には走行距離が短い車ほどきれいですし、長い車ほど汚れています。
特にチェックしたいのが運転席のへたり具合です。長く乗っていると運転席はどうしてもへたってきます。もちろん、運転手の体重や体格によってへたり具合には差が出るので一概には言えないのですが、走行距離に比べてあまりにもへたりが進行している場合はメーター改ざんを疑った方がいいかもしれません。
また、年式と走行距離を比べることも重要です。中古車の走行距離はおおむね年式の古さに比例します。以前のオーナーのライフスタイルにもよりますが、通常の自動車ユーザーは大体1年間で1万kmほど走るといわれています。5年落ちならば5万km、10年落ちならば10万kmというわけです。この距離に明らかにそぐわない場合は、メーター改ざんの可能性があります。5年落ちで3000kmしか走っていないなど、明らかに不自然な部分がある自動車は注意したほうがいいでしょう。もちろん、本当に5年間で3000kmしか走っていない中古車もあるので一概には言えませんが、そもそも車というのはずっと放置するよりもある程度走らせた方が調子が良くなることが多いので、年式に対して走行距離が短すぎる自動車はどちらにしろ避けたほうがいいでしょう。
最後に
さて、ここまでメーター改ざんを見抜くための様々な方法を紹介してきましたが、実際問題メーターの改ざんを見抜くのは簡単なことではありません。最も確実なのは走行距離管理システムを用いた方法ですが、この方法は過去のデータの蓄積が元になっているので、データの蓄積がなければまったく意味がありません。
その他の方法はあまりにも不確実すぎます。ステッカー類ははがされたら終わりですし、点検整備記録簿は業者に勝手に処分されたら終わりです。
特に点検整備記録簿がない自動車の購入はかなりリスキーです。点検整備記録簿は普通に自動車に乗っていれば、ユーザーが紛失することはまずありません。にもかかわらず点検整備記録簿がないということは、おそらく業者側が何らかの都合で破棄したのでしょう。そのような業者の中古車が信頼できるとは到底思えません。それに、もし仮に点検整備記録簿のない自動車を購入し、その後売りに出すことになった場合、その中古車は走行不明車として扱われる可能性が高くなります。走行不明車は走行距離が明確な自動車と比べて、その価値が半減します。
点検整備記録簿がない自動車は、最初から買わないようにしたほうがいいでしょう。
ただし、それでも以前と比べればメーター改ざんが少なくなっているのは事実です。大手のオークション会場で、信頼できる代行業者に頼めば、メーター改ざん車をつかまされる可能性はぐんと減ります。いい業者を見つけて、中古車オークションで自動車を購入しましょう。